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エナメル塗りとは?ふっ素・シリコン・ポリウレタンの下塗りと素地別の工程

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けんせつる

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「ふっ素樹脂エナメル塗り」の下塗りって何を使うんだっけ?

塗料の名前が長すぎて、どれがどれだか覚えられないよ。

この記事の要点

エナメル塗りは、屋外の鉄鋼面・亜鉛めっき鋼面・コンクリート面を、耐候性の高い塗料で仕上げる塗装です。

覚えどころは1つ。下塗りは塗料の種類ではなく「素地」で決まります。亜鉛めっき鋼面なら変性エポキシ樹脂プライマー、鉄鋼面ならジンクリッチプライマーです。

塗料と素地の組合せ全体は塗装工事にまとめています。

エナメル塗りとは、樹脂の名前を冠した塗料で仕上げる塗装のことです。

公共建築工事標準仕様書の第18章には、この形の節が3つ並んでいます。

常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗り、アクリルシリコン樹脂エナメル塗り、2液形ポリウレタンエナメル塗りの3つです。

3つとも適用範囲は同じで、屋外の鉄鋼面・亜鉛めっき鋼面・コンクリート面等に使います。屋外に使う塗装なので、耐候性が求められる場面が出番です。

エナメル塗りの工程を素地ごとに並べた模式図。鉄鋼面の下塗りはジンクリッチプライマー、亜鉛めっき鋼面の下塗りは変性エポキシ樹脂プライマー、コンクリート面の下塗りは反応形合成樹脂ワニスで、中塗り・上塗りはどの素地でも選んだ樹脂で決まることを示す。
下塗り(色の付いた箱)は素地ごとに違う。中塗り・上塗り(灰色)は選んだ樹脂で決まり、素地では変わらない。※関係をつかむための模式図で、工程数・材料はすべてを描いてはいない。
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標準仕様書の「エナメル塗り」は3つある

3つの違いは、中塗り・上塗りに使う樹脂だけです。

塗装の名称 記号 上塗りに使う塗料
2液形ポリウレタンエナメル塗り 2-UE 鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料(JIS K 5657)/建築用ポリウレタン樹脂塗料(JIS K 5656)
アクリルシリコン樹脂エナメル塗り 2-ASE アクリルシリコン樹脂塗料(JASS 18 M-404)
常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗り 2-FUE 鋼構造物用ふっ素樹脂塗料(JIS K 5659)/建築用ふっ素樹脂塗料(JIS K 5658)

名前が長いのは、樹脂名+エナメルという付け方だからです。頭の樹脂名だけ読めば、どの節の話かが分かります。

耐候性の位置づけは塗装工事の塗料表にまとめてあります。ウレタン塗装そのものの下地確認・膜厚管理はウレタン塗装で扱っています。

下塗りは塗料ではなく素地で決まる

ここがこの記事の本題です。

上の3つは中塗り・上塗りの樹脂が違いますが、下塗りは3つとも共通で、素地ごとに決まっています。

素地 下塗り(1回目) 塗付け量
鉄鋼面 ジンクリッチプライマー(JIS K 5552)2種
※2回目=エポキシ樹脂塗料、3回目=エポキシ樹脂雲母状酸化鉄塗料
0.14kg/m²
亜鉛めっき鋼面 変性エポキシ樹脂プライマー(JASS 18 M-109)
※2回目=エポキシ樹脂雲母状酸化鉄塗料
0.14kg/m²
コンクリート面
押出成形セメント板面
反応形合成樹脂ワニス(JASS 18 M-201。2液反応形エポキシ樹脂ワニス) 0.08kg/m²

つまり「ふっ素だから下塗りはこれ」という覚え方をすると外します。素地を先に見て、下塗りを決めるという順番です。

鉄鋼面の下塗り3回は製作工場で行います。工場塗装と現場塗装の分かれ目でもあるので、鉄骨の錆止めは鉄骨のさび止め塗装もあわせて確認してください。

なお下塗りの呼び分け(プライマー・シーラー・ワニス)が紛らわしいときは、シーラーとはで役割の違いを整理しています。

亜鉛めっき鋼面だけ、なぜ下塗りが違うのか

亜鉛めっき鋼面は、素地ごしらえの段階から別の表が用意されているためです。

標準仕様書は亜鉛めっき鋼面の素地ごしらえに、りん酸塩化成皮膜処理(A種)またはエッチングプライマー塗り(B種)を置いています。

このエッチングプライマーを、JIS K 5500(塗料用語)は「成分の一部が生地の金属に反応して化学的生成物を作り、生地に対する塗膜の付着性を増すようにした、金属素地処理用の塗料」と定義しています。

めっき面は、塗膜の付着を確保するための手当てが要る面だということです。だから下塗りも、鉄鋼面用のジンクリッチプライマーではなく、変性エポキシ樹脂プライマーになります。

ジンクリッチプライマーは亜鉛末を含む鉄鋼面のさび止め用です。めっき面の下塗りにジンクリッチプライマーと書かれていたら、素地と下塗りの組合せが入れ替わっています。

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2液形の塗料では何を確認するか

エナメル塗りの上塗りは、主剤と硬化剤を混ぜて使う2液形が中心です。

2液形は混ぜた時点から化学反応が進むため、1液形とは管理項目が変わります。

  • 可使時間(ポットライフ)……混合後、塗れる状態でいられる時間。可使時間内に使い終える量だけを調合します。多く作って余らせると、硬化が進んで使えません。
  • 工程間隔時間……塗り重ねまでにあける時間。短すぎても長すぎても不可で、下限と上限があります。短いと下の層が硬化しないまま重ねることになり、密着不良の原因になります。
  • 研磨紙ずり……工程表に組み込まれています。亜鉛めっき鋼面のエナメル塗りでは、中塗りの前後に研磨紙P320を使います。

具体的な間隔は塗料と気温で決まるので、施工計画書で製品の仕様と照合して確認します。気温・湿度そのものの管理値は塗装工事の施工禁止条件にまとめました。

屋内のコンクリート面は「非水分散形塗料」

エナメル塗り3つはどれも屋外用です。同じコンクリート面でも、屋内は別の節になります。

それがアクリル樹脂系非水分散形塗料塗り(NAD、JIS K 5670)で、適用範囲は屋内のコンクリート面・モルタル面等です。

工程 材料 塗付け量
下塗り アクリル樹脂系非水分散形塗料 0.10kg/m²
研磨紙ずり 研磨紙P220〜240
中塗り アクリル樹脂系非水分散形塗料(下塗りと同一材料 0.10kg/m²
仕上げ塗り アクリル樹脂系非水分散形塗料(同一材料) 0.10kg/m²

エナメル塗りと違い、下塗りから仕上げ塗りまで同じ材料を同じ量ずつ塗るのが特徴です。ここが試験の的になります。

研磨紙の番手は、数字が大きいほど目が細かくなります。工程表がP220〜240を指定しているので、これより数字の小さい粗い番手は範囲の外です。研磨の等級そのものはケレン等級素地ごしらえで扱っています。

混同しやすい用語の整理

変性エポキシ樹脂プライマー と エッチングプライマー

どちらも亜鉛めっき鋼面に出てくるので混ざりますが、工程の中の位置が違います。

エッチングプライマーは素地ごしらえ(B種)で使う金属素地処理用の塗料です。塗装の準備側にあり、標準仕様書ははけ又はスプレーで1回塗るとしています。

変性エポキシ樹脂プライマーは下塗り(1回目)です。素地ごしらえが済んだ面に、エナメル塗りの1層目として塗ります。

素地ごしらえがA種のときは、エッチングプライマーではなくりん酸塩化成皮膜処理になります。どちらを使うかは特記で決まります。

過去問でどう問われたか

塗装工事は、平成27年度から令和7年度まで、1級の第一次検定で毎年1問出ています。引っかけは3つのパターンです。

  • 希釈の取り違え……木材保護塗料を水で希釈させる、合成樹脂エマルションペイントを有機溶剤で希釈させる。11年で7回と、これが最多です。
  • 工程間隔時間を短くする……2液形ポリウレタンエナメルや非水分散形塗料の間隔を、所定より短く設定させる。
  • 研磨紙の番手・塗料の選定……中塗り前の研磨に粗すぎる番手を当てる、水がかり部に耐水性の低い塗料を当てる。
年度・級・No. 問われ方/引っかけ
1級 平成27年 No.41 水がかり部分に合成樹脂エマルションペイントを用いたとした → 耐水性が劣るため不向き ←③選定
1級 平成28年 No.41 木材保護塗料を水で希釈したとした → 原液のまま使う ←①希釈
1級 平成29年 No.41 2液形ポリウレタンエナメルの工程間隔時間を短く設定した → 硬化前に重ねると密着不良 ←②間隔
1級 平成30年 No.41 木材保護塗料を水で希釈したとした → 原液のまま使う ←①希釈
1級 令和元年 No.41 2液形ポリウレタンエナメルの工程間隔時間を短く設定した → 所定の間隔をあける ←②間隔
1級 令和2年 No.41 非水分散形塗料の中塗り前の研磨に研磨紙P80を用いたとした → 粗すぎる(工程表はP220〜240) ←③番手
1級 令和3年 No.36 木材保護塗料を水で希釈したとした → 原液のまま使う ←①希釈
1級 令和4年 No.59(応用能力) 非水分散形塗料の工程間隔時間を短くした/エマルションペイントを有機溶剤で希釈した → 不適当2つ ←①②
1級 令和5年 No.37 木材保護塗料を水で希釈したとした → 原液のまま使う ←①希釈
1級 令和6年 No.36 エマルションペイントを有機溶剤で希釈したとした → 水で希釈する ←①希釈
1級 令和7年 No.36 木材保護塗料の原液を水で希釈したとした → 原液のまま使う ←①希釈

この表を見ると、エナメル塗りの話は誤りの肢になっていません

「亜鉛めっき鋼面の常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗りの下塗りに変性エポキシ樹脂プライマーを使用した」は、平成28・30年、令和3・5・7年と5回出て5回とも正しい肢です。

「ふっ素樹脂エナメルの下塗りをローラーブラシ塗りとした」も、平成29年、令和2・4・6年と4回とも正しい肢でした。

つまりエナメル塗りの下塗りは、覚えておくと選択肢を消せる側の知識です。引っかけ役ではなく、消去法の足場として毎年出ています。各行は該当する過去問解説にリンクしています。

理解度チェック

Q.

亜鉛めっき鋼面に常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗りを行うとき、下塗りは何を使うか。

変性エポキシ樹脂プライマー(JASS 18 M-109)です。ふっ素・アクリルシリコン・2液形ポリウレタンのどれでも、亜鉛めっき鋼面ならこの下塗りになります。

Q.

ジンクリッチプライマーは、どの素地の下塗りに使うか。

鉄鋼面です。亜鉛めっき鋼面の下塗りには使いません。素地と下塗りの組合せを入れ替えるのが試験の手口です。

Q.

2液形の塗料を調合するとき、量をどう決めるか。

可使時間内に使い終えられる量だけを調合します。混合後は反応が進むため、余らせると硬化して使えなくなります。

Q.

アクリル樹脂系非水分散形塗料塗りは、屋外と屋内のどちらに使うか。

屋内です。屋内のコンクリート面・モルタル面等が適用範囲で、下塗り・中塗り・仕上げ塗りとも同一材料を各0.10kg/m²塗ります。エナメル塗り3つは屋外用です。

まとめ

  • エナメル塗り=樹脂名+エナメル。ふっ素・アクリルシリコン・2液形ポリウレタンの3つがあり、どれも屋外用。
  • 下塗りは塗料でなく素地で決まる。鉄鋼面=ジンクリッチプライマー、亜鉛めっき鋼面=変性エポキシ樹脂プライマー、コンクリート面=反応形合成樹脂ワニス。
  • 亜鉛めっき鋼面は素地ごしらえから別扱い。付着を確保する手当てが要る面だから。
  • 2液形は可使時間内に使い切る量を調合し、工程間隔は下限と上限の間で守る。
  • 屋内のコンクリート面は非水分散形塗料(NAD)で、下塗り〜仕上げ塗りが同一材料・各0.10kg/m²。

> 塗料と素地の組合せ全体は塗装工事を確認する
> 気温・湿度・含水率の管理値は塗装工事の施工禁止条件を確認する
> 木部の透明仕上げは木部の塗装工事を確認する

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参考資料

  • 公共建築工事標準仕様書(建築工事編)第18章 塗装工事「2液形ポリウレタンエナメル塗り(2-UE)」「アクリルシリコン樹脂エナメル塗り(2-ASE)」「常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗り(2-FUE)」「アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り」の適用範囲・工程表(塗料の規格番号・塗付け量・研磨紙の番手)
  • 公共建築工事標準仕様書(建築工事編)第18章 2節 亜鉛めっき鋼面の素地ごしらえ(りん酸塩化成皮膜処理・エッチングプライマー塗り)
  • JASS 18 塗装工事(日本建築学会材料規格 M-109 変性エポキシ樹脂プライマー、M-201 反応形合成樹脂ワニス、M-404 アクリルシリコン樹脂塗料)
  • JIS K 5500 塗料用語(エッチングプライマー・シーラーの定義)、JIS K 5552/K 5656/K 5657/K 5658/K 5659/K 5670
  • 一般財団法人 建設業振興基金「1級 建築施工管理技術検定 第一次検定(学科)試験 問題」(塗装工事の出題)

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けんせつる

この記事を書いた人

ハナダユキヒロミツメラボ

設計事務所に7年勤務し、建築構造設計に従事。設計者として施工図確認・工程会議・検査立会いなど施工管理と協働してきた経験と、公共建築工事標準仕様書・JASS等の一次資料をもとに執筆しています。

「建築学生が学ぶ構造力学」(kentiku-kouzou.jp)を2010年より運営。著書「わかる構造力学」(工学社)。

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