けんせつる
「高力ボルトのトルシア形とJIS形の違いって何?ナット回転量って何度回せばいいの?
共回り・軸回りって何を確認するの?」
この記事の要点
高力ボルト接合(摩擦接合)の施工管理で押さえるべきポイントは次の3点です。
高力ボルト接合(摩擦接合)は、ボルトを強く締め付けることで接合材同士の接触面に大きな摩擦力を発生させ、その摩擦力でせん断力を伝達する接合方法です。ボルト自体がせん断力を受けるわけではなく、「締付け力で挟み込んだ板の摩擦」が力を伝えます。
ザックリ言えば「強い挟み込み力で板同士を摩擦で固定する」接合方法ですね。そのため、ボルトの軸力(締付け力)を正確に導入することが施工管理の核心です。
| 種類 | 締付け管理方法 | 本締め完了の確認 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| トルシア形高力ボルト(S10T) | ピンテール(先端の破断部)が所定のトルクで折れる | ピンテールの破断を目視確認 | 確認が簡単・施工ミスが少ない。現在の主流。 |
| JIS形高力ボルト(F10T等) | 1次締め後のナット回転量で管理 | ナット回転量 120°±30°(M12?M22)をマーキングで確認 | トルクレンチまたはインパクトレンチで施工。 |
トルシア形はボルト先端のピンテールが折れた(破断した)ことで「所定の軸力が入った」とわかる設計です。作業者の技量に依存せず一定の軸力が得られるため、現在の鉄骨工事では主流です。
JIS形は古くから使われており、ナット回転量での管理が基本ですね。
高力ボルトの締付けは「1次締め→マーキング→本締め」の3段階で行います。
ボルトを締め付ける際は、接合部の群の中央のボルトから始めて外側(端部)に向かって順次締めていきます。外側から締め始めると、端部が先に締まった後で中央のボルト締付け時に端部が浮き上がる(板の密着不良)ことがあります。
外側から締めてはいけない理由は「板の変形を均等に分散させるため」です。コンクリートの打設と同じく「中央から端部へ」が鉄骨接合部の基本ですね。
高力ボルト摩擦接合のすべり係数は、接触面の状態によって大きく変わります。
混同しやすい用語の整理
共回り:本締め時にナットを回そうとするとボルト軸も一緒に回ってしまう現象。マーキングでボルト軸とナットの相対的な動きを確認して検出する。
共回りが起きると所定の軸力が入っていない可能性がある。
軸回り:マーキング確認時に、ナットは正常に回転量があるのにボルト軸が母材側に回ってしまっている現象。
→ どちらも「マーキングのズレのパターン」で判定する。
摩擦接合:ボルトの締付け力による接触面の摩擦力でせん断を伝達する。高力ボルトが対象。
支圧接合:ボルト自体がせん断力を受け、孔壁に圧力をかけて伝達する。普通ボルト(黒ボルト)が対象。
→ 建築鉄骨の主要接合は摩擦接合(高力ボルト)が原則。
Q1. トルシア形高力ボルトの本締め完了はどのように確認するのか。
A. ピンテール(ボルト先端の破断部)が折れていること(破断)を目視確認する。ピンテールが残っている場合は本締め未完了。
Q2. JIS形高力ボルト(M12?M22)の本締め時のナット回転量はいくらか。
A. 120°±30°(合計90°?150°の範囲)。1次締め後にマーキングして、本締め完了後に回転量を確認する。
Q3. 高力ボルト接合の締付け順序の原則は何か。
A. 接合部の群の中央から外側(端部)に向かって締め付ける。外側から始めると板の浮きが生じやすい。
Q4. 高力ボルトの接触面に塗装を行ってよいか。
A. 不可。接触面への塗装はすべり係数(摩擦力)を著しく低下させるため禁止。
接触面にはさびを残すか、ブラスト処理を行う。
参考資料
※ この記事の法令確認日:2026年5月
現場でよく問題になるのは「接触面に誤って塗装してしまった」ケースです。柱脚部や仕口部の接触面に外壁塗装の塗料が飛散して付着することがあります。
塗装工事と鉄骨工事のタイミングが重なる場合は、接触面をマスキングして保護するのか、先行してボルト締め付けを完了させてから塗装に入る工程管理が必要です。接触面の状態確認は、本締め前に必ず全箇所目視確認するチェックシートを作成しておきましょう。