ゼロから学ぶ建築施工管理

  1. HOME
  2. 施工管理
  3. > 排水トラップの封水深と通気管

排水トラップの封水深50~100mmの根拠と通気管の施工管理ポイント

けんせつる

けんせつる

「トラップの封水深って50~100mmって聞いたけど、なぜその数値なの?二重トラップがダメな理由は?」

この記事の要点

排水トラップとは、排水管内の臭気・害虫が室内に侵入するのを防ぐため、排水口の内部に水(封水)を封じ込める構造です。

  • 封水深50mm以上100mm以下(空気調和・衛生工学会規格 SHASE-S 206)。
  • 二重トラップ禁止:同一排水経路に2つ以上のトラップを設けると通気が妨げられ、封水が吸い出される。
  • 通気管の目的:排水時の管内気圧変動を防ぎ、封水切れ(封水破れ)を防止する。

排水トラップとは何か

トラップとは、排水管の途中に設けられた水をためる構造部分です。この水(封水)が、排水管内の悪臭・ガス・害虫が室内側に上がってくるのを遮断する役割を果たします。

洗面台や浴槽の排水口の下には必ずトラップがあり、排水しても一定量の水が残るように設計されています。この「残った水」が封水で、臭気を遮断するフタの役割をします。

トラップが正常に機能しているかどうかは、完成後の竣工検査・機能確認試験で確認するのが基本ですね。

封水深はなぜ50mm以上100mm以下か

封水深とは、トラップ内にたまっている水の深さのことです。SHASE-S 206(空気調和・衛生工学会規格)では、封水深を50mm以上100mm以下と規定しています。

50mm未満だと、排水時の気圧変動や蒸発により封水がなくなりやすく(封水切れ)、臭気が室内に流入します。100mmを超えると、今度は水の重さによって流れが悪くなり、排水管の洗浄効果が低下します。

つまり「50~100mm」は、臭気遮断の最低水深と排水性能のバランスからくる範囲です。この数値は試験でも頻出でしょう。

施工管理では、メーカーが提供するトラップの仕様書で封水深が50~100mmの範囲内に入っているか確認します。特に造作の樋(ひ)やオーダー品のトラップでは確認が必要です。

トラップの種類と使い分け

トラップの形状は設置場所に応じていくつかの種類があります。

種類形状の特徴主な用途
SトラップS字形。排水口の下方向(床下)に排水する。洗面器・手洗い(床排水)
PトラップP字形。排水口の横方向(壁)に排水する。洗面器・手洗い(壁排水)
UトラップU字形。横引き管の途中に設ける。床排水横引き管
椀型トラップ(ベルトラップ)椀型の蓋で封水をつくる。着脱しやすい。床排水口・浴室床

ザックリ言えば、壁排水ならPトラップ、床排水ならSトラップや椀型、という使い分けです。いずれも封水深は50~100mmの範囲に収まるように設計されています。

二重トラップが禁止される理由

同一の排水経路に2つ以上のトラップを設けることを「二重トラップ」と呼び、建築設備の規準では禁止されています。

なぜかというと、2つのトラップの間の排水管が密閉状態になり、排水が流れるたびに気圧変動が生じるからです。この変動がトラップの封水を吸い出してしまい(サイホン作用)、封水切れを引き起こします。

例えば、洗面台にSトラップが取り付けられているのに、さらに床の排水口にも別のトラップを設けると二重トラップになります。設備設計図を見て「トラップが2カ所に重なっていないか」を確認することが施工管理では重要ですね。

通気管はなぜ必要か

排水管に大量の水が流れると、管内の空気が圧縮・膨張して気圧が変動します。この気圧変動がトラップの封水を押したり引いたりすることで、封水切れが起きます。

通気管は排水管に接続して大気に開放することで、この気圧変動を解消します。排水しながらも管内の気圧を一定に保つことで、封水が安定して保たれます。

通気管の主な種類

施工管理では、通気管の終端が窓・換気口などから適切に離れているか、屋上貫通部の防水処理が確実に行われているかを確認します。

管理人からのコメント

現場で確認が漏れやすいのは「伸頂通気管の屋上貫通部」です。排水立て管が屋上スラブを貫通して上に延びる部分は、防水層の立上がり処理が必要です。

設備工事と防水工事の工程が合わずに、通気管の貫通部分の防水処理が後回しになるケースがあります。設備・防水・建築の工程調整を施工計画書に明記しておくことが重要です。

また、通気管の終端位置については、窓・換気口等の開口部からの離隔距離を設計段階で確認しておきましょう。

混同しやすい用語の整理

封水深 vs 封水

封水:トラップ内に保持されている水そのもの(臭気遮断の役割)。
封水深:封水の深さ(50mm以上100mm以下)。

深さが不足すると封水切れが起きる。

サイホン作用 vs 誘導サイホン作用

サイホン作用:トラップ自体のS字形状などで封水が流れ出てしまう現象(Sトラップに多い)。
誘導サイホン作用:他の器具からの大流量排水による管内圧力変動で封水が吸い出される現象。

通気管で防止する。

一問一答

Q1. 排水トラップの封水深の規定値(最小値・最大値)を答えよ。

A. 50mm以上100mm以下(SHASE-S 206)。50mm未満は封水切れのリスク、100mm超は排水性能低下のリスクがある。

Q2. 二重トラップが禁止される理由は何か。

A. 2つのトラップの間が密閉空間になり、排水時の気圧変動で封水がサイホン作用により吸い出されるため。

Q3. 排水立て管の上端を延長して屋上で大気に開放する通気方式を何と呼ぶか。

A. 伸頂通気管。排水立て管と一体の通気管で、最も基本的な通気方式。

まとめ

設備工事の施工管理は施工管理の視点でまとめています。

参考資料

  • SHASE-S 206 給排水衛生設備規準・同解説(空気調和・衛生工学会)
  • 建築設備設計基準(国土交通省大臣官房官庁営繕部)
  • 公共建築工事標準仕様書(建築工事編)国土交通省
けんせつる

このサイトの管理人

けんせつる

建築業界の実務経験をもとに、建築施工管理の用語・施工手順・混同しやすい違いを整理しています。

Topへ >>