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孔内水平載荷試験とは|変形係数・水平地盤反力係数の使い方まで解説

けんせつる

けんせつる

「孔内水平載荷試験ってよく聞くけど、N値と何が違うの?どんな設計に使うの?」

この記事の要点

孔内水平載荷試験は、ボーリング孔の孔壁を水平方向に押して地盤の変形特性を調べる試験です。得られる変形係数・水平地盤反力係数は、地中連続壁や杭の水平抵抗の設計に直接使われます。

打撃回数で地盤の硬さを見るN値とは目的が異なり、水平力に対する地盤の「粘り」を数値化できるのがこの試験の強みです。

なぜ孔の中で水平に力をかける必要があるか

建物の基礎は鉛直荷重だけを受けているわけではありません。地震力や土圧、水圧など、水平方向の力も地盤に伝わります。

問題は、標準貫入試験(SPT)で得られるN値は鉛直方向の打撃貫入抵抗であって、水平方向に地盤がどう変形するのかは直接わからありません。

ザックリ言えば、「縦に押したときの固さ」と「横に押したときの粘り」は別物です。

例えば、地中連続壁(ソイルセメント壁や鉄筋コンクリート壁)を設計するときは、土圧に対して壁がどれだけたわむかを計算します。そのたわみ量を求めるには、水平方向の地盤ばね定数が必要になります。

これが孔内水平載荷試験を行う一番の動機です。

試験の仕組みはどうなっているか

孔内水平載荷試験は、ボーリングで掘った孔の中にプローブ(円筒形のゴム膜装置)を入れて行います。

プローブ内部に加圧すると、ゴム膜が膨らんで孔壁を押します。この圧力と変位(孔の拡がり量)を段階的に測定するというのが基本的な流れです。

試験方式は主に2種類あります。

どちらも「圧力をかけながら変位を測る」という原理は同じです。違いは剛性とプローブの構造にあります。

試験から何の値が得られるか

孔内水平載荷試験では、圧力と変位の関係から以下の値が得られます。

変形係数(E)

地盤の弾性的な変形しやすさを示す値です。圧力と変位の関係が直線的な範囲(弾性域)の傾きから計算します。

単位はkN/m2(kPa)またはMN/m2(MPa)で、値が大きいほど変形しにくい、つまり固い地盤です。

水平地盤反力係数(kh)

地盤が水平力を受けたときの反力の強さを表す係数です。単位はkN/m3で、杭や矢板の水平方向の設計で使われます。

要は、地盤が「横から押したときにどれだけ押し返すか」を数値にしたものです。

降伏圧力・極限圧力

降伏圧力は地盤が弾性変形から塑性変形に移行する圧力、極限圧力は地盤が破壊に至るときの圧力です。

この2つを把握することで、その地盤が「どのくらいの圧力まで耐えられるか」の上限がわかります。

静止土圧

試験開始時の孔壁に作用している圧力(初期水平応力)です。山留め設計における土圧の推定に使えます。

N値との使い分けはどう考えるか

N値は地盤の硬さを打撃回数で表した指標です。地盤分類や支持層の判定、液状化判定など、地盤全体の傾向をつかむのに向いています。

一方で孔内水平載荷試験は、水平方向の設計値(変形係数・水平地盤反力係数)を直接測定します。N値から推定式で変形係数を計算することもできますが、精度は落ちます。

簡単にいうと、「N値は地盤を大まかに把握する道具、孔内水平載荷試験は設計計算に使う数値を測る道具」という位置づけです。

例えば、杭の水平耐力の詳細設計や地中連続壁の変位計算では、N値から推定した値では精度が不十分なことがあります。そういった場合に孔内水平載荷試験を実施するというのが実務の判断です。

ボーリング調査・標準貫入試験・静的貫入試験・ベーン試験・物理探査・平板載荷試験等の調査方法は、昭和46年建設省告示第111号(下図)の第一「地盤調査の方法」に規定されています。

昭和46年建設省告示第111号 第一 地盤調査の方法
出所:昭和46年建設省告示第111号 p.1 第一 地盤調査の方法(ボーリング調査・標準貫入試験・静的貫入試験・ベーン試験・物理探査・平板載荷試験等の調査方法が規定されている)

建設現場での活用場面はどこか

孔内水平載荷試験の結果が実際に使われる場面を整理します。

地中連続壁・山留め壁の設計

土圧に対する壁体の変形量を計算するとき、地盤ばね(水平地盤反力係数)が必要です。掘削深度が深い現場や軟弱地盤では、N値の推定値では安全側に設計しすぎるか、逆に過小評価するリスクが生じます。

孔内水平載荷試験で実測値を取れば、設計の精度が上がります。

杭の水平力設計

杭は鉛直荷重だけでなく、地震時の水平力も受けます。杭の水平変位や曲げモーメントを計算するには、地盤の水平地盤反力係数が必要です。

例えば、海岸部や港湾の埠頭杭では水平力が支配的になります。こうした現場では孔内水平載荷試験が標準的に実施されます。

岩盤の変形性評価

ダムや大型構造物の基礎岩盤の変形係数を評価するとき、ボアホールジャッキ試験が有効です。岩盤は室内試験サンプルの採取が難しいため、孔内原位置試験の価値が高くなります。

管理人より

孔内水平載荷試験は「なんとなく実施する試験」ではなく、設計計算の入力値を直接得るための試験です。変形係数と水平地盤反力係数のどちらが必要かによって、解析方法も変わります。

発注者の設計意図を理解した上で試験計画を立てる必要がある、ということを現場では意識してほしいと思います。

N値を用いた支持ぐいの許容支持力計算式は、昭和46年建設省告示第111号(下図)の第三に規定されており、孔内水平載荷試験で得る変形係数はN値推定とは異なる測定値です。

昭和46年建設省告示第111号 第三 支持ぐいの許容支持力
出所:昭和46年建設省告示第111号 p.6 第三 支持ぐいの許容支持力(N値を用いた計算式。孔内水平載荷試験は水平方向の変形係数を直接測定する点でN値推定とは異なる)

混同しやすい用語の整理

変形係数 vs 弾性係数(ヤング率)

弾性係数(ヤング率)は材料が完全弾性を示す理想状態の剛性を表します。変形係数は地盤の実際の圧力・変位関係から求めた値で、弾塑性的な挙動を含みます。

地盤では「弾性係数」と呼ばずに「変形係数」と呼ぶのが一般的です。

水平地盤反力係数 vs 地耐力

地耐力は鉛直方向の荷重に対する地盤の支持力です。水平地盤反力係数は水平方向の変形に対する抵抗です。

向きが違うので、混同しないようにしましょう。地耐力は平板載荷試験などで求め、水平地盤反力係数は孔内水平載荷試験で求めます。

ボアホールジャッキ試験 vs プレシオメーター試験

どちらも孔内水平載荷試験の一種ですが、ジャッキ式は剛性プレートで押すため岩盤向き、プレシオメーター式はゴム膜を膨張させるため軟弱土向きです。対象地盤によって使い分けます。

一問一答

Q1. 孔内水平載荷試験で得られる値のうち、杭の水平力設計で使われる値はどれか。

A. 水平地盤反力係数(kh)です。杭の水平変位や曲げモーメントの計算に使います。

変形係数から換算して求めることもあります。

Q2. ボアホールジャッキ試験とプレシオメーター試験の使い分けを説明してほしい。

A. ボアホールジャッキ試験は剛性プレートで孔壁を押すため岩盤や硬質地盤に適しています。プレシオメーター試験はゴム膜を膨張させる方式で、軟弱な土質地盤に向いています。

Q3. N値が分かっていても孔内水平載荷試験を実施する理由は何か。

A. N値は水平方向の変形特性を直接測定できないからです。N値から変形係数を推定することはできますが、精度に限界があります。

地中連続壁や杭の水平設計で高精度が求められる場合は、孔内水平載荷試験で実測値を取ることが必要になります。

まとめ

RC・鉄骨の施工管理はRC・鉄骨の施工管理にまとめています。

参考資料

  • 地盤工学会「地盤調査の方法と解説」
  • 日本建築学会「建築基礎構造設計指針」
  • 国土交通省「地盤調査・地盤改良に関する技術指針」
けんせつる

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けんせつる

建築業界の実務経験をもとに、建築施工管理の用語・施工手順・混同しやすい違いを整理しています。

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