けんせつる
「地下水位ってどうやって測るの?根切りや山留めの設計とどうつながっているの?」
この記事の要点
地下水調査は、根切り時の湧水リスク・山留め壁への水圧・液状化・周辺地盤沈下を把握するために行います。主な方法は孔内水位測定・揚水試験・間隙水圧計の3種類です。
静水位と動水位の違い、透水係数の意味を理解すると、施工計画への反映のしかたが見えてきます。
建物を建てるとき、地下を掘ることは避けられません。地下室・杭工事・根切りなど、地中に踏み込む場面では地下水の状況が工事の安全を左右します。
ザックリ言えば、「地下に何が埋まっているか」だけでなく「地下に水がどれだけあるか」を知らないと、安全な施工計画は立てられないということです。
地下水が施工に与える影響は主に4つあります。
例えば、都市部の深い根切り工事では、ウェルポイントやディープウェルで地下水位を下げながら掘削します。その際、どの深さに地下水があり、どれだけの透水性があるかを事前に把握しておかないと、揚水量の設計ができません。
根切りの工法選定(地下水の状態等に適した工法)と排水の規定は、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版(下図)の3.2.1・3.2.2節に示されています。
地下水位の基本的な測定は、ボーリング孔を使って行います。掘削したボーリング孔を観測用に転用し、孔内の水位を計測するというのが孔内水位測定です。
電気式水位計(電気検層器)と鋼巻尺の2種類が使われます。
電気式水位計はケーブルの先に電極を付けた装置で、孔内に下ろしていくと水面に触れた瞬間に通電してブザーや表示が出ます。深い孔でも正確に計測できるので現場での標準的な道具です。
鋼巻尺は小規模な調査や確認用として使われます。チョークやペーストを塗っておくと水面の跡がわかりやすくなります。
測定には2種類の水位があります。
静水位は、ボーリング作業を止めて十分な時間が経過した後に安定した水位です。地盤の自然な地下水位を反映しています。
動水位は、揚水や注水によって変動している最中の水位です。揚水試験中の水位変化を測定するときに使います。
静水位の測定には、掘削後少なくとも24時間以上経過させることが推奨されます。掘削の影響が残っていると正確な値が得られありません。
地層は均一ではないため、深さによって地下水の状態も異なります。
浅い層に「不圧地下水(自由面地下水)」、深い層に「被圧地下水(圧力を受けた地下水)」が存在する場合、それぞれの水位は別物です。被圧地下水は掘り当てた瞬間に孔口から噴き出すこともあるので注意が必要です。
揚水試験は、ボーリング孔やテスト井戸から実際に地下水を汲み上げ、水位の変化を観測する試験です。
この試験の目的は、透水係数(k)を求めることです。透水係数は地盤が水を通しやすい度合いを示す値で、単位はm/sです。
値が大きいほど水が速く流れる地盤ということになります。
例えば、砂礫層の透水係数は10~3?10~2m/s程度、粘土層は10??m/s程度です。この差は100万倍以上あり、排水計画の設計にとって決定的な違いになります。
揚水試験の手順は以下の流れです。
この透水係数が分かると、根切り時の湧水量の見積もりや、ウェルポイントの本数・配置の設計が可能になります。
地盤調査は工事前だけではありません。施工中に地下水位や水圧を継続的に監視することも重要です。
間隙水圧計は地盤中の水圧を測定するセンサーで、山留め壁背面や根切り底付近に埋設します。掘削が進むにつれて水圧がどう変化するのかを把握し、異常な水圧上昇があれば早期に対応できます。
ザックリいえば「地盤の中に圧力計を入れてリアルタイムで監視する」というものです。
例えば、大深度の根切り工事では、掘削ステップごとに間隙水圧計のデータを確認しながら進めます。水圧が想定より高くなっていれば追加の排水対策を講じる、という判断につながります。
水圧計(ピエゾメーター)は、観測孔内に設置して孔内水位を連続的に計測するタイプです。長期の施工管理や竣工後の地下水モニタリングにも使われます。
地下水位は一定ではありません。季節によって変動し、大雨の後は急激に上昇することがあります。
一般的に、梅雨?秋は地下水位が高くなりやすく、冬?早春は低下する傾向があります。ただし、地域や地質によって傾向は異なります。
施工計画への反映で大切なのは、調査時点の水位が最高水位とは限らありません。調査が冬場に行われた場合、夏の水位は調査値より高い可能性があります。
そのため、水位の季節変動が大きい地域では、複数回の測定や既存の記録を参照して設計水位を設定することが重要です。山留め設計の水圧計算では「計画最高水位」を使うのが原則で、調査時の静水位をそのまま使うと危険なケースがあります。
孔内水位測定・地下水調査の主要手段であるボーリング調査は、国土交通省告示第111号(下図)の第一「地盤調査の方法」に規定されています。
混同しやすい用語の整理
静水位は外乱がない状態での安定した水位です。動水位は揚水や注水によって変化している最中の水位です。
揚水試験中に測定するのは動水位で、揚水を止めて回復した後の安定値が静水位に戻ります。
透水係数(k)は地盤が水を通しやすい固有の値です。水理勾配(i)は水頭差を距離で割った値で、地下水の流れの傾きを表します。
地下水の流速はダルシー則により「流速 = k × i」で求めます。透水係数は地盤の性質、水理勾配は場の条件です。
混同しないようにしましょう。
不圧地下水(自由地下水)は大気圧と同じ圧力の地下水で、地表からの雨水が浸透してたまったものです。被圧地下水は上下を不透水層に挟まれた帯水層にあり、大気圧より高い圧力を持ちます。
被圧地下水を掘り当てると自噴することがあり、施工上の注意が必要です。
Q1. 揚水試験で求められる値は何か。また、その値は施工計画にどう使われるか。
A. 透水係数(k)が求められます。根切り時の湧水量の推定や、ウェルポイント・ディープウェルの本数・配置設計に使われます。
透水係数が大きいほど多くの排水設備が必要になります。
Q2. 静水位の測定で注意すべき点は何か。
A. ボーリング掘削後すぐに測定しても正確な値が得られません。掘削の影響(泥水・圧力変化)が残っているため、少なくとも24時間以上経過させてから測定することが推奨されます。
また、季節変動の影響も考慮し、複数回の測定が望ましいです。
Q3. 間隙水圧計はどの場面で使われるか。
A. 大深度根切りや山留め工事の施工中に、地盤中の水圧変化をモニタリングするために使われます。掘削ステップごとの水圧変化を把握し、異常があれば追加の排水対策を判断する根拠になります。
竣工後の長期モニタリングにも活用されます。
RC・鉄骨の施工管理はRC・鉄骨の施工管理にまとめています。
参考資料
※ この記事の法令確認日:2026年5月
管理人より
地下水調査で見落とされがちなのが、「時間軸」の問題です。1回の測定値だけで判断すると、季節や降雨の影響を見逃します。
地下水は動いています。調査のタイミングと設計水位の設定について、設計担当者と丁寧に確認することが現場管理者には求められるでしょうね。