けんせつる
「有効のど厚ってサイズに何を掛けるんだっけ? 有効長さの規定もいつも覚えられない……」
この記事の要点
すみ肉溶接の有効のど厚はサイズ×0.7。有効長さはサイズの10倍以上、かつ40mm以上という2つの条件を両方満たす必要があります。
完全溶込み溶接は引張・曲げに使い、すみ肉溶接はせん断力を受ける継手に使います。溶接部の内部欠陥は超音波探傷試験(UT)、表面欠陥は浸透探傷試験(PT)または磁粉探傷試験(MT)で検査します。
溶接には大きく2種類あります。使う場所と目的がそれぞれ異なるので、最初に整理しておきましょう。
完全溶込み溶接(グルーブ溶接)は、母材を完全に溶かして一体化する溶接です。断面のすべてが溶け込んでいる状態なので、引張力や曲げ応力がかかる重要な継手に使います。
柱と梁の接合部など、力の大きい部位はほぼこのグルーブ溶接が担っています。
すみ肉溶接は、母材の表面に三角断面の溶着金属を盛り付ける溶接です。ザックリ言えば「母材を溶かし切らず、表面に盛ってくっつける」イメージです。
せん断力を受ける継手や、補助的な接合部に多く使われます。グルーブ溶接ほど強度は出ませんが、加工コストが抑えられるメリットがあります。
すみ肉溶接の断面には「サイズ」と「のど厚」という2つの寸法があります。混同しやすいので確認しましょう。
サイズ(S)は、直角二等辺三角形の断面で表したときの2辺の長さです。実際に盛り付けた溶接ビードの脚長に相当します。
のど厚(a)は、その三角形の内接円の半径ではなく、直角の頂点から斜辺(ルート面)に下ろした垂線の長さです。つまり溶接断面の有効な高さを意味しています。
例えば現場でサイズ10mmのすみ肉溶接を施工した場合、有効のど厚は7mmということになりますね。
有効のど厚の計算式は次のとおりです。
有効のど厚 = サイズ × 0.7
なぜ0.7かというと、直角二等辺三角形の斜辺と高さの比がおよそ1:0.707(1/√2)になるからです。45度の仮定をもとに設計上の有効高さを求めた数値が0.7といいます。
試験では「サイズ×0.6」や「サイズ×0.8」という選択肢が出てきますが、正解は0.7一択です。
計算例:サイズ12mmのすみ肉溶接の有効のど厚 = 12 × 0.7 = 8.4mm
有効のど厚と並んで重要なのが有効長さの規定です。
すみ肉溶接の有効長さは次の2つの条件を両方満たす必要があります。
① サイズの10倍以上(10S以上)
② 40mm以上
要は、「溶接長さが短すぎると強度が保証できない」ということです。
例えばサイズ6mmのすみ肉溶接の場合、10×6=60mmと40mmを比べて、大きいほうの60mm以上が有効長さの最小値になります。サイズが3mmなら10×3=30mmで40mmより小さくなるので、この場合は40mmが下限になります。
「サイズの8倍以上」と間違える方が多いのですが、正しくは10倍以上です。この数字は試験でも繰り返し出てくるので確実に押さえておきましょう。
溶接後の品質確認には、欠陥の種類に応じた検査方法を使い分けます。
超音波探傷試験(UT)は、内部欠陥(割れ・ブローホール・スラグ巻き込みなど)を検出する方法です。完全溶込み溶接部の内部検査に使います。
浸透探傷試験(PT)は、赤い浸透液を表面に塗布して欠陥部に染み込ませ、現像液で浮き上がらせる方法です。表面に開口した欠陥しか検出できないため、内部欠陥には対応できません。
磁粉探傷試験(MT)も表面欠陥の検査に使います。磁粉を磁場で引き寄せることで、表面および表面直下の欠陥を可視化します。
簡単にいうと、「内部を調べるなら超音波、表面を調べるなら浸透か磁粉」という使い分けです。
溶接部の試験・検査(外観検査・超音波探傷試験等)の規定は、公共建築工事標準仕様書(下図)の7.6.10~7.6.11に示されています。
混同しやすい用語の整理
サイズは溶接断面の脚長(盛り付けた三角形の2辺の長さ)。有効のど厚はサイズ×0.7で求める設計上の有効高さ。
サイズと有効のど厚は別物。
完全溶込み溶接(グルーブ溶接)は母材を完全に溶かして一体化。引張・曲げがかかる重要継手に使う。
すみ肉溶接は表面に三角断面で盛り付け。せん断力を受ける継手に使う。
超音波探傷試験は内部欠陥の検査。浸透探傷試験は表面に開口した欠陥の検査。
溶接部の内部割れを調べるのは超音波探傷のみ。
Q1. サイズ8mmのすみ肉溶接の有効のど厚はいくらか。
A. 8 × 0.7 = 5.6mm。有効のど厚 = サイズ × 0.7 で計算する。
Q2. サイズ5mmのすみ肉溶接の有効長さの最小値はいくらか。
A. 10 × 5 = 50mm と 40mm を比較し、大きいほうの50mm以上。2つの条件(10S以上かつ40mm以上)の両方を満たす必要がある。
Q3. 完全溶込み溶接部の内部欠陥を確認する検査方法として適切なのはどれか。
A. 超音波探傷試験(UT)。浸透探傷試験(PT)は表面欠陥の検査であり内部欠陥には対応できない。
RC・鉄骨の施工管理はRC・鉄骨の施工管理にまとめています。
参考資料
※ この記事の法令確認日:2026年5月
管理人からのコメント
受験生がよく引っかかるのは「溶接部の内部欠陥に浸透探傷試験を選ぶ」ミスです。浸透探傷試験は液体が染み込む仕組みなので、表面に穴が開いていないと検出できません。
内部欠陥の検査は超音波探傷一択、と覚えてしまいましょう。有効のど厚の係数(0.7)と有効長さの条件(10倍かつ40mm以上)は計算問題で直接聞かれることもあります。
数字をそのまま暗記しておくと安心です。