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鋼材とは?SN材・TMCP鋼・FR鋼・低降伏点鋼の違いを過去問で整理

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けんせつる

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低降伏点鋼って、モリブデンを入れて作るんだっけ……?

TMCP鋼は溶接に強いの、弱いの?

この記事の要点

低降伏点鋼は、添加元素を極力減らした純鉄に近い鋼で、強度が低く延性が高く、制振装置(ダンパー)に使います。モリブデン等を添加するのは耐火鋼(FR鋼)で、この2つの入れ替えが最頻出です。

TMCP鋼は溶接性に優れ、SN490B・Cは炭素当量の上限を規定した溶接性のよい鋼材です。「TMCPは溶接性が劣る」「SNは炭素当量の規定がない」は誤りです。

溶接の施工は鉄骨の溶接、ミルシートはミルシートにまとめています。

鋼材は、鉄に炭素などを加えた材料で、用途に合わせて溶接性・耐火性・制振性などを高めた種類があります。試験(1級のNo.11〜13、2級でも頻出)でねらわれるのは、種類ごとの目的の取り違えです。まず最頻出の「低降伏点鋼とFR鋼」を図で押さえます。

低降伏点鋼と耐火鋼(FR鋼)の違いを表す模式図。低降伏点鋼は添加元素を極力低減した純鉄に近い鋼で、強度が低く延性が高く、地震時に早期に降伏させて制振装置(ダンパー)に使う。耐火鋼(FR鋼)はモリブデン等の元素を添加して高温時の強度を高めた鋼で、耐火被覆を低減できる。モリブデンを添加するのはFR鋼であり、低降伏点鋼ではない。
低降伏点鋼は純鉄に近い制振用、FR鋼はモリブデン等を添加した耐火用。モリブデンを入れるのはFR鋼。※関係をつかむための模式図。
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低降伏点鋼とFR鋼を混同しない

この分野いちばんの引っかけです。目的と成分が正反対です。

  • 低降伏点鋼添加元素を極力減らした純鉄に近い鋼。強度が低く延性が高く、地震時に早期に降伏させて制振装置(履歴型ダンパー)に使います。
  • 耐火鋼(FR鋼)モリブデン等の元素を添加して高温時の強度を高めた鋼。耐火被覆を低減・省略できます。

ねらわれるのは、「低降伏点鋼は、モリブデン等の元素を添加することで強度を低くし延性を高めた鋼材である」という肢です。モリブデンを添加するのはFR鋼で、低降伏点鋼は純鉄に近いのが正解。目的で覚えると、低降伏点鋼=制振(やわらかく)/FR鋼=耐火(高温に強く)です。

溶接性を高めた鋼材:SN材・TMCP鋼

  • SN材(SN490B・C など):建築構造用圧延鋼材。炭素当量などの上限を規定して溶接性を改善した鋼材です。「炭素当量の規定がない」とするのは誤りです。B種・C種は溶接を前提とし、降伏比の上限なども規定されます。
  • TMCP鋼:熱加工制御(Thermo-Mechanical Control Process)で製造され、炭素当量を低く抑えながら強度・じん性を高めた鋼で、溶接性に優れます。「溶接性は劣る」とするのは誤りです。
  • 炭素当量・溶接割れ感受性組成:鋼材の溶接性を表す指標です。炭素量が多くなると溶接性は低下します。

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鋼の基本性質

  • 炭素量と性質:炭素量が多くなると、引張強さは増加し、靱性(じん性)は低下します。溶接性も下がります。
  • ヤング係数:鋼材のヤング係数(弾性係数)は、常温では強度(種類)によらずほぼ一定(約2.05×105 N/mm²)です。「強度が高いほどヤング係数が大きい」は誤りです。
  • 融点:鋼の融点は約1,500℃です。「約1,000℃で融解する」とするのは誤りです。
  • 熱処理:材質を変えるための熱処理に、焼入れ(加熱後に急冷して硬く強度を上げる)・焼戻し・焼ならしなどがあります。
  • SN400Bの引張強さ:建築構造用圧延鋼材SN400Bの引張強さの下限値は400N/mm²です(数字が下限値を表します)。

混同しやすい用語の整理

低降伏点鋼 と 耐火鋼(FR鋼)

成分と目的が逆です。

低降伏点鋼は、添加元素を減らした純鉄に近い鋼。やわらかく、制振装置に使います。

耐火鋼(FR鋼)は、モリブデン等を添加した鋼。高温に強く、耐火に使います。「低降伏点鋼にモリブデンを添加」は誤りです。

SN材 と TMCP鋼(溶接性)

どちらも溶接性のよい鋼です。

SN材は、炭素当量の上限を規定して溶接性を改善した建築構造用圧延鋼材。

TMCP鋼は、熱加工制御で炭素当量を抑え、溶接性に優れた鋼。「TMCPは溶接性が劣る」は誤りです。

過去問でどう問われたか

鋼材は、1級(No.11〜13)・2級とも第一次検定でほぼ毎年出ます。引っかけは3つのパターンです。

  • 低降伏点鋼とFR鋼……低降伏点鋼を「モリブデン等を添加した鋼」とする。正しくは純鉄に近い鋼(モリブデンはFR鋼)。最頻出。
  • 溶接性の逆転……TMCP鋼を「溶接性は劣る」、SN490B/Cを「炭素当量の規定がない」とする。正しくはどちらも溶接性がよい。
  • 数値のすり替え……鋼の融点を「約1,000℃」、ヤング係数を「強度が高いほど大きい」とする。
年度・級・No. 問われ方/引っかけ
1級 令和6年 No.13 「SN490B/Cは炭素当量の上限の規定がない」とした → 上限を規定している ←②溶接性
1級 令和4年 No.11 「低降伏点鋼はモリブデン等を添加して強度を低くした」とした → 純鉄に近い鋼(モリブデンはFR鋼) ←①低降伏点鋼
1級 令和2年 No.11 「低降伏点鋼はモリブデン等を添加して延性を高めた」とした → 純鉄に近い鋼 ←①低降伏点鋼
1級 平成30年 No.11 「TMCP鋼は溶接性は劣るが高じん性」とした → 溶接性に優れる ←②溶接性
1級 平成28年 No.12 「SS材は純鉄に近い鋼で強度を低くし延性を高めた」とした → それは低降伏点鋼の説明 ←①種類
2級 令和7年 No.4 「鋼は約1,000℃で融解する」とした → 約1,500℃ ←③数値

安定して問われるのは低降伏点鋼は純鉄に近い制振用(モリブデンはFR鋼)、TMCP鋼は溶接性に優れる、SN490B/Cは炭素当量の上限を規定、鋼の融点は約1,500℃です。各行は該当する過去問解説にリンクしています。

理解度チェック

Q.

低降伏点鋼は、モリブデン等を添加して作る鋼材か。

違います。低降伏点鋼は、添加元素を極力減らした純鉄に近い鋼で、強度が低く延性が高く、制振装置に使います。モリブデン等を添加するのは耐火鋼(FR鋼)で、この入れ替えが最頻出です。

Q.

TMCP鋼の溶接性は、優れているか劣っているか。

優れています。TMCP鋼は熱加工制御で炭素当量を低く抑えており、同じ強度の一般鋼より溶接性に優れます。「溶接性は劣る」とするのは誤りです。

Q.

SN490B・Cは、炭素当量の上限が規定されているか。

規定されています。SN材は炭素当量などの上限を規定して溶接性を改善した建築構造用圧延鋼材です。「炭素当量の規定がない」とするのは誤りです。

Q.

鋼材のヤング係数は、強度が高い鋼ほど大きくなるか。

なりません。ヤング係数は常温では強度(種類)によらずほぼ一定(約2.05×10⁵ N/mm²)です。「強度が高いほど大きい」とするのは誤りです。

まとめ

  • 低降伏点鋼は純鉄に近い制振用(やわらかい)。モリブデン等を添加するのはFR鋼(耐火)。最頻出の入れ替え。
  • SN材(SN490B/C)は炭素当量の上限を規定した溶接性のよい建築構造用圧延鋼材。
  • TMCP鋼は熱加工制御で溶接性に優れる。炭素当量・溶接割れ感受性組成は溶接性の指標。
  • 炭素量が多いと引張強さ増・靱性低下・溶接性低下。ヤング係数は強度によらず一定。
  • 鋼の融点は約1,500℃。熱処理は焼入れ・焼戻し・焼ならし。

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参考資料

  • 建築構造用鋼材の解説(日本鉄鋼連盟ほか):低降伏点鋼は添加元素を極力低減した純鉄に近い鋼で、強度が低く延性が高く、履歴型制振ダンパーに用いる。耐火鋼(FR鋼)はモリブデン等を添加して高温時の強度を高め、耐火被覆を低減する鋼材
  • TMCP鋼の解説(JFEスチール・溶接情報センター):TMCP鋼は熱加工制御で製造され、炭素当量を低く抑えて強度・じん性を高めた、溶接性に優れた鋼材
  • JIS G 3136(建築構造用圧延鋼材SN材):SN490B・Cは炭素当量などの上限を規定して溶接性を改善。ヤング係数は強度によらずほぼ一定(約2.05×10⁵ N/mm²)、鋼の融点は約1,500℃
  • 一般財団法人 建設業振興基金「1級・2級 建築施工管理技術検定 第一次検定(学科)試験 問題」(鋼材の出題)

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けんせつる

この記事を書いた人

ハナダユキヒロミツメラボ

設計事務所に7年勤務し、建築構造設計に従事。設計者として施工図確認・工程会議・検査立会いなど施工管理と協働してきた経験と、公共建築工事標準仕様書・JASS等の一次資料をもとに執筆しています。

「建築学生が学ぶ構造力学」(kentiku-kouzou.jp)を2010年より運営。著書「わかる構造力学」(工学社)。

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