けんせつる
S10TとF10Tって何が違うの?ピンテールが折れたら本締め完了なの?共回りってどうやって見つけるの?
この記事の要点
S10Tはトルシア形高力ボルトの規格記号で、ボルト先端のピンテール(破断溝付き突起)が折れることで本締め完了を確認できます。F10TはJIS形高力ボルトで、1次締め後のマーキングからナット回転量120°±30°で管理します。
施工管理では締付け後に共回り・軸回りをマーキングのズレパターンで確認することと、摩擦面への塗装・油脂の付着を防ぐことが主なポイントです。
S10TとF10Tの違いをひとつずつ整理していきましょう。
| 項目 | S10T(トルシア形) | F10T(JIS形・六角) |
|---|---|---|
| 形状 | 先端にピンテール(破断溝付き突起)がある | 通常の六角ボルト形状 |
| 本締め確認 | ピンテールの破断を目視確認 | ナット回転量120°±30°をマーキングで確認 |
| 工具 | 専用シャーレンチ | トルクレンチ・インパクトレンチ |
| 特徴 | 所定の軸力で自動的に破断。作業者の技量差が出にくい | 古くから使われる標準形。回転量で管理する |
| 現在の主流 | ✅ 現在の建築鉄骨で主流 | 補修・追加締めなどで使用 |
ザックリ言えば、「S10Tはピンテールが折れたら完了、F10Tは角度で管理する」ということです。
S10Tの「S」はShear(せん断)を指し、所定のトルクに達するとピンテールがせん断破断する仕組みになっています。なんとなく使い分けのイメージができてきましたか。
高力ボルトの締付けは「1次締め→マーキング→本締め」の3段階で行います。
例えば、1次締めの段階でボルト群の端部から先に締めてしまうと、後から中央を締めるときに板が浮きやすくなります。必ず中央から外側の順に進めることが大切です。意外と守られていないことが多いので、工程前に職人さんへ必ず伝えておきましょう。
本締め後の確認では、マーキングのズレパターンを見ます。ここは混乱しやすいところですね。「共回り」と「軸回り」をしっかり区別しましょう。
S10T(トルシア形)の場合は、ピンテールが本締め作業中に破断したかどうかも確認します。1次締め作業中にシャーレンチの設定ミスで先にピンテールが折れることがあるため、「折れたタイミング」が重要です。本締め記録と照合して確認します。
高力ボルト摩擦接合のすべり係数は摩擦面の状態で大きく変わります。
外壁塗装や防錆塗装の工程と重なりやすいので、早めに段取りを確認しておきたいところでしょう。
混同しやすい用語の整理
共回りはナットを回すとボルト軸も一緒に回ってしまう現象で、マーキングを見るとナットとボルト頭が同方向にずれている。軸回りはナットは正常に回っているのにボルト軸が母材側に回ってしまう現象で、母材側のマーキングがずれている。どちらも所定の軸力が入っていない可能性があり、補修が必要。
摩擦接合はボルトの締付け力で接触面に摩擦力を発生させてせん断を伝達する。高力ボルト(S10T・F10T)が対象。支圧接合はボルト自体がせん断力を受け、孔壁への圧力で伝達する。普通ボルト(黒ボルト)が対象。建築鉄骨の主要接合は摩擦接合が原則。
S10T(トルシア形)高力ボルトの本締め完了はどうやって確認するのか?
ピンテール(ボルト先端の破断部)が折れていることを目視確認する。ただしピンテールが折れたタイミング(本締め中か1次締め中か)も重要で、本締め記録とマーキング確認を合わせて行う。
F10T(JIS形)高力ボルトの本締め時のナット回転量はどれくらいか?
120°±30°(JASS 6 の規定)。1次締め後にマーキングして、本締め完了後に回転量をマーキングで確認する。回転量が不足または過大な場合は再確認が必要。
高力ボルトの摩擦面に塗装があった場合はどうするのか?
本締め前に塗装を除去する。摩擦面への塗装はすべり係数を著しく低下させるため禁止。外壁塗装との工程調整で飛散を防ぐか、本締め前にマスキングして保護する。
> 高力ボルトとは?を確認する
> ピンテール破断の確認方法とは?を確認する
RC・鉄骨の施工管理はRC・鉄骨の施工管理にまとめています。
参考資料
・JASS 6 鉄骨工事(日本建築学会)高力ボルト接合の節
・公共建築工事標準仕様書(建築工事編)第7章 鉄骨工事 7.4節
※ この記事の法令確認日:2026年5月
管理人からのコメント
気をつけたいのは「外壁塗装と鉄骨本締めの工程が重なり、摩擦面に塗料が飛散する」ケースです。
一度塗装が付いた摩擦面は、表面を削り取らない限り所定のすべり係数が確保できません。塗装工事前に本締めを完了させるか、接触面をマスキングして保護するか、工程上どちらが現実的かを早めに確認することが大切です。
もう一つは「共回りを見落とす」問題です。
ピンテールが折れているから本締め完了と思い込んで、マーキングの確認をしないケースがあります。1次締め中に誤って折れている場合もあるため、マーキング確認は必ず行ってください。