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大空間鉄骨架構の建方とは?リフトアップ・ブロック・スライド・移動構台の違い

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けんせつる

けんせつる

リフトアップ工法とブロック工法って、どっちも持ち上げるだけじゃないの?

スライドと移動構台も、何が違うのか分からないよ。

この記事の要点

ドームや体育館のような大空間の屋根鉄骨は、5つの工法で建てます。総足場・スライド・移動構台・リフトアップ・ブロックの5つです。

見分け方は2つだけ。持ち上げる手段(ジャッキかクレーンか)と、動かす対象(屋根架構か構台か)です。

一般の鉄骨建物の建方(積上げ方式・建て逃げ方式)は鉄骨の建て方方式にまとめています。

大空間鉄骨架構の建方とは、大きなスパンの屋根鉄骨を、所定の高さに据えるための建方のことです。

大空間の屋根は、支えがないと自立できません。だから屋根をどう支えながら組むかが、そのまま工法の名前になっています。

5つの工法は、次の図のように「何が動くか」で3つに分かれます。ここを押さえると、名前の丸暗記が要らなくなります。

大空間鉄骨架構の建方5工法を、動かすものごとに分類した模式図。総足場工法は足場・構台を全域に組んで動かさない。スライド工法は屋根架構が横に動き、移動構台工法は構台が横に動く。リフトアップ工法はジャッキで引き上げ、ブロック工法はクレーンで吊り上げる。
5工法は「動かさない・横へ動かす・上へ上げる」で整理できる。同じ「上へ上げる」でも、リフトアップはジャッキ、ブロックはクレーンと手段が違う。※関係をつかむための模式図で、実際の架構の形を描いたものではない。
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5つの工法の中身

それぞれの定義を並べます。

工法 どうやって架構をつくるか
総足場工法 必要な高さまで足場を組み立て、作業用の構台を全域にわたり設置して架構を構築する。
スライド工法 作業構台上で所定の部分の屋根鉄骨を組み立てた後、そのユニットを所定位置まで順次滑動横引きしていき、最終的に架構全体を構築する。
移動構台工法 移動構台上で所定の部分の屋根鉄骨を組み立てた後、構台を移動させ、順次架構を構築していく。
リフトアップ工法 地上または構台上で組み立てた屋根架構を、先行して構築した構造体を支えとして、ジャッキ等により引き上げていく
ブロック工法 地組みした所定の大きさのブロックを、クレーン等で吊り上げて架構を構築する。

並べると、後ろの4つはどれも「組む場所と、据える場所が違う」工法だと分かります。総足場工法だけが、据える場所でそのまま組む工法です。

リフトアップ工法とブロック工法はどう違うか

持ち上げる手段が違います。

リフトアップ工法はジャッキです。先に構築した柱などの構造体を支えにして、そこに取り付けたジャッキで屋根架構を引き上げます。

ブロック工法はクレーンです。地組みしたブロックを揚重機で吊り上げて、順に組み立てます。

どちらも「地上で組んでから上げる」ところは同じなので、手段だけが分かれ目になります。リフトアップ工法をクレーンで吊り上げる工法と説明していたら誤りです。それはブロック工法の説明です。

ブロック工法は吊り上げる以上、クレーンの能力と、地組みのための組立てスペースが要ります。クレーンの選定は固定式クレーンと移動式クレーンの違いを確認してください。

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スライド工法と移動構台工法は、動かすものが逆

この2つは、どちらも「構台の上で屋根鉄骨を組む」ところまで同じです。そのあとが逆になります。

スライド工法は、屋根架構のほうが動きます。決まった場所で1ユニットを組み、それを軒梁などに沿って滑らせて所定位置へ送り、また同じ場所で次を組みます。構台は動きません。

移動構台工法は、構台のほうが動きます。構台をレール等の上で移動させながら、その上で屋根鉄骨を順次組み立てていきます。

組む場所が固定なのがスライド工法、組む場所が移っていくのが移動構台工法、と押さえると取り違えません。

なぜ地上で組む工法が使われるのか

高所作業を減らせるからです。

大空間の大屋根は、もともと地上に仮設の構台や移動式の足場を設置し、施工中の屋根を支えながら構築する方法がとられていました。総足場工法がこれにあたります。

ただしこの方法では高所作業が避けられず、安全を確保するために多くの労力が要りました。仮設そのものの設置や撤去にも手間がかかります。

そこで、地上で組み立てた屋根部材を移動させて据え付ける工法が使われるようになりました。ジャッキで引き上げるリフトアップ工法は、クレーンを用いることなく持ち上げられるため、在来工法のような高所での危険作業が少なくなり、作業時の安全性が高くなります。

実際に、ドーム球場・アリーナ・航空機の格納庫といった大空間の建築で使われてきた工法です。

施工管理で確認すること

  • 工法の選定根拠:建物の形状・スパン・敷地条件と、選んだ工法が合っているかを施工計画書で確認する。細長い建物ならスライド系、設置位置が高いならリフトアップ系が候補になる。
  • 揚重機の能力:ブロック工法では、最も重いブロックがクレーンの定格荷重と旋回範囲に収まるかを確認する(鉄骨建方の揚重計画と同じ考え方)。
  • 地組みスペース:ブロック工法・スライド工法は、地組みのヤードが別途要る。敷地に取れるかを事前に確認する。
  • 仮設の量:総足場工法は全域に足場・構台を組むため、設置と撤去の手間が最も大きい。工程への影響を見込む。
  • 上げている最中の安定:屋根架構は据え付くまで自立しない。支持点・ジャッキの同調など、施工中の安定をどう確保する計画かを確認する。

混同しやすい用語の整理

大空間の5工法 と 積上げ方式・建て逃げ方式

どちらも鉄骨の建方ですが、対象と論点が違います。

積上げ方式・建て逃げ方式は、一般の鉄骨建物で柱・梁をどの順序で組むかの話です。フロアごとに完成させるか、横方向に進むかで分かれます。鉄骨の建て方方式にまとめました。

大空間の5工法は、大スパンの屋根架構をどうやって所定の高さに据えるかの話です。屋根が自立できないことが出発点になっています。

過去問でどう問われたか

大空間鉄骨架構の建方は、平成30年度から令和6年度まで、1級の第一次検定で4回問われています。引っかけは2つのパターンです。

  • 持ち上げる手段のすり替え……リフトアップ工法を「クレーン等で吊り上げる」と説明させる。それはブロック工法。正しくはジャッキ等で引き上げる。
  • 動かす対象のすり替え……スライド工法と移動構台工法を入れ替える。動くのは、スライドが屋根架構、移動構台が構台。
年度・級・No. 問われ方/引っかけ
1級 平成30年 No.31 リフトアップ工法を「地組みしたブロックをクレーン等で吊り上げて構築する工法」とした → それはブロック工法。リフトアップはジャッキ等で引き上げる ←①手段
1級 令和2年 No.31 スライド工法を「移動構台上で組み立てた後、構台を移動させ、順次架構を構築する工法」とした → それは移動構台工法。スライドは屋根架構を横引きする ←②対象
1級 令和4年 No.28 リフトアップ工法を「地組みしたブロックをクレーン等で吊り上げて構築する工法」とした → 平成30年と同一の引っかけ ←①手段
1級 令和6年 No.28 移動構台工法を「組み立てた屋根鉄骨を構台と共に移動させ、先行架構と連結する工法」とした → 移動構台は構台を移動させながら順次組み立てる ←②対象

つまりジャッキならリフトアップ、クレーンならブロック。動くのが屋根ならスライド、構台なら移動構台です。この2組さえ言えれば、4年分とも消せます。各行は該当する過去問解説にリンクしています。

理解度チェック

Q.

リフトアップ工法は、屋根架構を何で持ち上げるか。

ジャッキ等です。先行して構築した構造体を支えとして引き上げます。クレーンで吊り上げるのはブロック工法で、ここが繰り返し問われます。

Q.

スライド工法で移動するのは、構台と屋根架構のどちらか。

屋根架構です。決まった場所でユニットを組み、それを所定位置まで滑動横引きします。構台のほうが移動するのは移動構台工法です。

Q.

総足場工法はどのような工法か。

必要な高さまで足場を組み立て、作業用の構台を全域にわたり設置して架構を構築する工法です。据える場所でそのまま組むため、仮設の設置・撤去の手間が大きくなります。

Q.

地上で屋根を組んでから上げる工法の利点は何か。

高所での危険作業が減り、安全性が高まることです。大空間の大屋根を高所で支えながら組む方法は、仮設の設置・撤去にも手間がかかります。

まとめ

  • 大空間鉄骨架構の建方は、総足場・スライド・移動構台・リフトアップ・ブロックの5工法。
  • リフトアップはジャッキ等で引き上げ、ブロックはクレーン等で吊り上げる。手段が分かれ目。
  • スライドは屋根架構が動き、移動構台は構台が動く。動かす対象が分かれ目。
  • 総足場工法だけが、据える場所でそのまま組む工法。仮設の手間が大きい。
  • 地上で組む工法が使われるのは、高所作業を減らして安全性を高めるため。

> 一般の建方の順序は鉄骨の建て方方式を確認する
> 建方の流れ全体は鉄骨建方を確認する
> クレーンの選定は固定式クレーンと移動式クレーンの違いを確認する

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参考資料

  • 一般財団法人 建設業振興基金「1級 建築施工管理技術検定 第一次検定(学科)試験 問題」(大空間鉄骨架構の建方の出題・各工法の記述)
  • 巴コーポレーション「立体構造|スライド工法/移動ステージ工法/リフトアップ工法/ブロック工法・ベント工法」(各工法の仕組みと適用条件)
  • 大林組「リフトアップ・ジャッキダウン工法」(クレーンを用いずジャッキで鉛直方向に吊上げ・押し上げる工法の説明)
  • 鹿島建設「大空間を実現する施工技術」(リフトアップ工法=先行して構築した構造物を支えとして屋根部材を引き上げる/従来の仮設構台・移動足場による施工との比較)

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けんせつる

この記事を書いた人

ハナダユキヒロミツメラボ

設計事務所に7年勤務し、建築構造設計に従事。設計者として施工図確認・工程会議・検査立会いなど施工管理と協働してきた経験と、公共建築工事標準仕様書・JASS等の一次資料をもとに執筆しています。

「建築学生が学ぶ構造力学」(kentiku-kouzou.jp)を2010年より運営。著書「わかる構造力学」(工学社)。

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