けんせつる
負の摩擦力って、摩擦杭と支持杭のどちらに大きく働くと思いますか?
この記事の要点
令和7年度 1級建築施工管理技士 第一次検定 No.4は、杭基礎に関する問題です。正解は選択肢4。
令和7年度 1級建築施工管理技士 第一次検定 No.4は、杭基礎に関する問題です。
問題文は建設業振興基金が公開している公式PDFで確認できます。
この問題では、4つの記述のうち、最も不適当なものを選びます。
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | ○(正しい) | 杭先端の許容応力度はアースドリル工法のほうがセメントミルク工法より小さい |
| 2 | ○(正しい) | 杭の中心間隔は埋込み杭のほうが打込み杭より小さくできる |
| 3 | ○(正しい) | 水平力を受ける長い杭の曲げモーメントは杭頭部のほうが杭地中部より大きい |
| 4 | ×(誤り) | 負の摩擦力は摩擦杭ではなく支持杭のほうが大きい |
選択肢4の「摩擦杭のほうが支持杭に比べて大きい」という記述が誤りで、正しくは支持杭のほうが大きいです。
杭基礎の設計で見落とされがちなのが、負の摩擦力(ネガティブフリクション)という概念です。
通常、杭は周辺地盤から上向きの摩擦力(正の摩擦力)を受けて建物を支えます。ところが、軟弱地盤が圧密沈下するなど、周辺地盤が杭よりも大きく沈下するケースがあります。このとき地盤は杭に対して下向きに引っ張るように作用するわけです。これが負の摩擦力です。
ザックリ言えば、「地盤が杭を道連れにして下へ引っ張る力」ということです。
杭先端の地盤の許容応力度は、場所打ちコンクリート杭と既製杭(セメントミルク工法)で異なります。
アースドリル工法は場所打ちコンクリート杭の一種です。施工時に掘削面が乱れやすく、スライムが残留するリスクがあるため、先端支持力の信頼性はセメントミルク工法の既製杭に比べて低く見積もられます。
そのため、アースドリル工法による場所打ちコンクリート杭の先端許容応力度は、セメントミルク工法の埋込み杭に比べて小さく設定されているわけです。この記述は正しいということです。
杭の中心間隔は、隣り合う杭が互いに影響し合わないための最低距離として定められています。
打込み杭は、打設時の振動や変位が周囲の地盤を乱します。この影響範囲を考慮するため、中心間隔を広めに取る必要があります。
埋込み杭は掘削して設置するため、打込み時のような地盤撹乱がありません。その分、杭の中心間隔を打込み杭より小さくすることができるわけです。
水平力を受ける長い杭では、杭頭部に大きな曲げモーメントが発生します。ここは混乱しやすいところですね。
杭頭部は構造物との接合部であり、水平力の入力点になります。杭を地中に固定された梁のようなものとして考えると、固定端に近い杭頭部が最も大きな曲げモーメントを受けるわけです。
杭地中部の曲げモーメントは、深さが増すにつれて減衰していきます。したがって「杭頭部のほうが杭地中部より大きい」は正しい記述です。
これが誤りを含む選択肢です。負の摩擦力が大きくなるのは、支持杭と摩擦杭のどちらでしょうか。
支持杭は、杭の先端が岩盤や硬い砂礫層に到達しています。先端が固定されているため、周辺の地盤が沈下しても杭自体はほとんど動きません。
一方、周辺地盤は沈下し続けます。この「地盤は下がる、杭は動かない」という相対変位が大きいほど、下向きに働く負の摩擦力も大きくなります。
摩擦杭は、先端支持ではなく周面摩擦で荷重を支える杭です。地盤が沈下するとき、杭もある程度一緒に沈下するため、地盤と杭の相対変位が小さくなります。その結果、負の摩擦力の発生は小さくなるわけです。
「摩擦杭のほうが支持杭に比べて大きい」とした記述は誤りで、正しくは支持杭のほうが大きいです。
けんせつるの一言
現場でよく聞くのは「支持杭なら安心」という思い込みです。支持杭は確かに荷重支持能力は高いのですが、負の摩擦力という逆向きの力に対しては注意が必要なんです。地盤沈下が予想される軟弱地盤での設計では、この点を忘れてはいけません。
負の摩擦力と杭の種類の関係は、「動くか動かないか」で整理するとわかりやすくなります。
支持杭は動かない → 地盤との相対変位が大きい → 負の摩擦力が大きいという順でつなぐと、誤った選択肢を見抜けるわけです。
周辺地盤が沈下したとき、負の摩擦力が大きく発生するのは摩擦杭と支持杭のどちらか。
支持杭です。先端が硬い地盤に固定されているため、沈下する地盤との相対変位が大きくなり、負の摩擦力が大きく発生します。
水平力を受ける長い杭で、曲げモーメントが最も大きくなるのはどの部分か。
杭頭部です。水平力の入力点となる杭頭部が最も大きな曲げモーメントを受けます。
出典
※ この記事の確認日:2026年6月
正解:選択肢4
支持杭は先端が硬い支持地盤に固定されているため、周辺地盤が沈下しても杭はほとんど動きません。その結果、地盤と杭の相対変位が大きくなり、負の摩擦力(ネガティブフリクション)は支持杭のほうが大きく発生するわけです。「摩擦杭のほうが大きい」という記述は逆です。