けんせつる
鉛直荷重で押されているのに、なんで引張側の応力度を求めるの?
この記事の要点
令和5年度 1級建築施工管理技士 第一次検定 No.8は、柱の底部に生じる引張縁応力度を求める計算問題です。正解は選択肢2(7 N/mm²)。圧縮応力度と曲げ応力度を差し引いて求めます。
令和5年度 1級建築施工管理技士 第一次検定 No.8は、柱ABの図心Gに鉛直荷重Pと水平荷重Qが作用したとき、底部の引張縁応力度の大きさを求める計算問題です。
問題文と図は建設業振興基金が公開している公式PDFで確認できます。
この問題では、4つの値のうち、正しいものを1つ選びます。
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1(3 N/mm²) | × | 圧縮を引きすぎた値で、曲げ応力度の計算が小さすぎる |
| 2(7 N/mm²) | ○(正しい) | 曲げによる引張から軸圧縮を差し引いた引張縁応力度 |
| 3(10 N/mm²) | × | 曲げ応力度のみで、軸圧縮を差し引いていない値 |
| 4(13 N/mm²) | × | 圧縮と曲げを足してしまった(圧縮縁側の値) |
圧縮側と引張側を取り違えると、選択肢4のように足し算してしまいます。引張縁は曲げの引張から軸圧縮を引くのが正しい手順です。
この問題では、軸力と曲げが同時に効く偏心圧縮の考え方が問われています。
見るべきポイントは「2つの応力度を重ね合わせる」ということです。
柱の断面には、鉛直荷重Pによる一様な圧縮と、水平荷重Qによる曲げの2つが同時に生じます。
これを式で書くと、縁応力度は「σ = P/A ± M/Z」となります。Aは断面積、Zは断面係数、Mは底部の曲げモーメントです。引張縁ではマイナス側を見るわけです。
選択肢1は3 N/mm²です。これは引張側として小さすぎる値になります。
引張縁応力度は「曲げによる引張応力度 − 軸方向の圧縮応力度」で求めます。
3 N/mm²になるのは、曲げ応力度 M/Z を実際より小さく見積もったときです。曲げモーメント M = Q×柱高さ の取り方を間違えると、この値に寄ってしまうわけです。したがって選択肢1は正しい値ではありません。
選択肢2は7 N/mm²で、これが正しい値です。
まず鉛直荷重Pによる圧縮応力度 P/A を求めます。次に水平荷重Qによる底部の曲げモーメント M = Q×柱の高さ を求め、それを断面係数Zで割って曲げ応力度 M/Z を出します。
引張縁では、曲げが引張を与える側に軸方向の圧縮が重なります。そこで引張縁応力度は「M/Z − P/A」で計算します。
この計算で引張縁応力度=7 N/mm²となります。曲げの引張から圧縮を差し引いた、ちょうど中間的な値になるわけです。
選択肢3は10 N/mm²です。これは曲げ応力度 M/Z だけを見た値に近くなります。
水平荷重Qによる曲げだけを計算し、鉛直荷重Pによる圧縮を差し引くのを忘れると、この値が出てしまいます。
実際には引張縁でも軸方向の圧縮が重なって引張を打ち消すため、10 N/mm²より小さくなります。圧縮を引き忘れている点で、選択肢3は正しい値ではありません。
選択肢4は13 N/mm²です。これは曲げ応力度に圧縮応力度を足してしまった値です。
「M/Z + P/A」を計算すると、これは圧縮が最も大きくなる圧縮縁側の応力度になります。
問われているのは引張縁なので、符号を取り違えて足してしまうと圧縮縁の値を答えることになります。したがって選択肢4は正しい値ではありません。引張縁は引き算、圧縮縁は足し算、と区別するところですね。
偏心圧縮の縁応力度は、「圧縮の一様分布に、曲げの傾きを重ねる」とイメージすると整理できます。
断面全体に同じだけ圧縮(P/A)がかかり、そこへ曲げ(M/Z)が片側を圧縮、反対側を引張に傾けます。引張側では曲げの引張から圧縮を引き、圧縮側では両方を足します。
引張縁=M/Z − P/A(引き算) / 圧縮縁=M/Z + P/A(足し算)と覚えれば、符号の取り違えを防げるでしょう。
鉛直荷重と水平荷重を受ける柱の引張縁応力度は、どの式で求めるか。
「曲げ応力度 M/Z − 軸方向の圧縮応力度 P/A」で求めます。曲げの引張から軸圧縮を差し引きます。
引張縁ではなく圧縮縁の応力度を求めるときは、式の符号をどうするか。
「M/Z + P/A」と足し算にします。曲げの圧縮側と軸圧縮が重なって最大になります。
出典
※ この記事の確認日:2026年6月
正解:選択肢2(7 N/mm²)
柱には鉛直荷重Pによる圧縮応力度と、水平荷重Qによる曲げ応力度が同時に生じます。引張縁では、曲げによる引張から軸方向の圧縮を差し引いた値が応力度になります。その値が7 N/mm²になるわけです。